ストーリー:
東京・上野―大都会に住むオスのカワウ、ウォルとレモは恋人ができないまま、仲間の巣作りを眺めていた.ある春の日、ふたりはあぶれた2羽のオス同士で一緒に立派な巣を作ろうと決心する.来る日も来る日も巣作りに明け暮れ、季節は変わり、自慢の巣が完成したのだが…
作品解説(湯山監督):
都会の鳥を題材にアニメが作れないだろうか…そんなことを思いついたのはもう15年程前にさかのほります.きっかけは、家の近所の電線に並んだ、見たこともない緑色の鳥の大群です.その鳥はワカケホンセイインコというオウムの一種で、ペットとして日本に連れてこられたものが野生化して東京に定住化したものでした.もともとは南方の鳥ですが、その住んでいた環境が東京の環境と似ていたために繁殖したということです.南方の森林と東京が似ている…どういうことかというと、平坦な土地に一定の距離をおいて木々が生えているその森林が、東京の街並みと似ていたということだそうです.都会という人間の作り出した環境も鳥達にとっては自然の環境のひとつでしかなかったということです.
都会の鳥達は、私たち人間のすぐ隣で、都会という自然のなかで子供を育て、夫婦で、親子で、集団でたくましく生活しているのです.
様々な姿かたちの鳥達の様々な暮らしぶり…そこにはまた様々な物語があるはずです.
そんな鳥達の物語が描ければ、新しいファンタジーが作れるのではないか.しかも、それを表現できるのはアニメーションしかないのではないか.
私は、いつか“都会の鳥”のアニメを作りたいと強く思うようになりましたが、その機会はなかなか訪れませんでした.
そして、やっとそのチャンスが巡ってきました.それがこの“ONE PAIR”です.
今回選んだ主人公は2羽のオスのカワウです.
カワウはオス同士がつがいで実際に巣をつくることがあります.巣づくりはオスの役目で、それが2羽かがりで作るものですから、その巣は通常のものよりも大きくて立派なものになるのだそうです.
なぜそんなことをするのかはわからないということですが、無駄なことに一生懸命になるのは人間にもよくあることです.それは、お金であったり、車であったり、洋服であったり、はたから見ればなにもそこまでという、必要以上のものにのめり込んでいく姿…誰しも思い当たることがあるのではないでしょうか..
そんな、誰もが抱える“満たされない心=Hungry Heart”をもった2羽の鳥達のちょっと人間的な物語をお楽しみください.
監督:
湯山 邦彦(ゆやま くにひこ):
1952年、東京都練馬区出身.
手塚治虫のアニメに魅了され、初めは漫画家、その後アニメ界を志す.アニメ制作会社にて動画の仕事を始め、そのままアニメ業界でアニメーターとして活躍する.その傍ら、絵コンテも担当するようになり、1978年より演出家に転向.1978年「銀河鉄道999」にて演出家としてデビュー.1982年に監督作品として最初のTVシリーズ「魔法のプリンセスミンキーモモ」で注目される.
監督作品は、「幻夢戦記レダ (映画・1985)」「ウインダリア (OVA・1986)」「アニメ三銃士 (TV・1987)」「剣勇伝説YAIBA (TV・1993)」「ポケットモンスター (TV・1997)」「ケータイ捜査官7 (TVドラマ・2008)」.
1997年4月より放送が開始された「ポケットモンスター」TVシリーズの総監督及び、1998年の劇場版ポケットモンスター「ミュウツーの逆襲」以降、毎年ポケットモンスターの映画・TVの監督を務める.
「ONE PAIR」は、初の3DCG短編オリジナルアニメーションである.
使用ソフトウェア:
Autodesk Maya 7.0, Pixar RenderMan
自社開発ツール(for RenderMan)
上映:
Prix Ars Electronica Animation Festival 2009, “Animal Worlds”
2009.9.4-8, Linz, Austria, OK Offenes Kulturhaus Oberösterreich (Mediendeck)
Future Film Festival 2009
Future Film Short 2009 Competition, Programma 2
2009.1.28, Bologna, Italy
I Castelli Animati
第13回 イ・カステリ・アニマティ国際アニメーション映画祭
International Showcase
2008.11.27, Genzano di Roma, Italy, Cinema Modernissimo
SIGGRAPH 2008
Computer Animation Festival Competition Screenings
2008.8.13, 8.15, Los Angeles, USA, Nokia Theatre
SIGGRAPHは、コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する世界最大の国際会議です.SIGGRAPHでは、世界最高峰の学会として技術論文の発表が行われるほか、優れた映像作品の上映、最新技術・アート作品・新商品の展示などが行われます.2008年のComputer Animation Festivalでは、世界中からの900を超える応募の中から選ばれた優れた映像作品が上映されました.
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5分43秒/2008
監督/脚本:湯山邦彦
制作:株式会社オー・エル・エム・デジタル |
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声の出演
ウォル:小堺一機
レモ:山寺宏一
ナレーション:小山茉美 |
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